入院2日目(手術当日)

長い1日です。記事も長〜くなった。

AM5:30

明るくなったので起きる。昨晩より気分が落ち着いていた。ベッドが固くて背中が痛い。ストレッチしてほぐす。

AM6:30

とうとう浣腸。看護師さんが持ってきたのを見たら、ふつーの浣腸より少し大きいくらい?普通のも使ったことないけど…ベッドに横になり、入れてもらう。「できれば5分我慢して」と言われたけど、ムリっす!!即トイレにたてこもり。1分もったかどうか。それで、和式トイレで出して、看護師さんを呼んでチェックしてもらうように。と言われてたので、ボタンを押してお呼びしましたよ…さすがプロ、サッとチェックして「OK!」といって流して行かれました。これで自分的前半の山場は終了。ここまででお腹は見事にペタンコ。

AM7:00

ハミガキ洗顔を済ませてラジオのチャロを聞いてたら、手術用のガウンに着替えるように言われる。普段の病衣を浴衣型にしたものだけど、丈が長くてひきずるのが嫌だった。着替えたらすかさず点滴。ブドウ糖維持液とかなんとか書いてある。点滴針はふつうのサイズで、一発で入れてくれて痛くなかった。良かった。

AM7:30

トイレに行くのに点滴のチューブが邪魔。それで、チューブをスタンドの空いたほうにひっかけて歩きまわってたら…点滴止まってる。んで、針のほうから血が逆流している〜〜!チューブが途中まで真っ赤。
慌てて廊下に出て看護師さん呼び止め、その場でスルスルと直してもらう。「心臓より上に上げちゃだめよ〜」とのこと。チューブから赤色が消え、ひんやりした点滴液が流れ出した。あーびっくりした。すんません。

AM8:00

部屋で朝食始まる。食欲ないので別にうやましくもなんともなかった。のどはかわくけど、うがいで我慢。まだ時間あるのにトイレしか行けないのが窮屈。

AM8:30

今日の担当もDさん。夫早々と到着。

AM9:00

廊下が急に騒がしくなり、「部長回診です」だって。噂にきく、エライ先生の回診が見られるのか!?夫はデイルームに追い出され、お腹を出してベッドに横になって待機。部長であるC先生がやってきて、軽く聴診器をあて「腹部、へいたーん。」とか言いつつ次の人のほうへ行った。このあと手術なのに、一言もないもんだなぁと思ったら看護師さんに言われてやっと気づいたようだった。この部長回診ってなんのためにやってんだろか。看護師さんたちの緊張感は半端なかったけど。そんで、こういう業務をやってるからいつもC先生は外来の開始が遅れるんだなぁと納得した。

AM9:30

部長回診が終わってやれやれ、と思っていると、Dさんともう1人の看護師さんが血相変えて走ってきた。「そろそろ移動です!準備してください」え!もう? 最後にトイレに行かせてもらった。点滴ひきずってるからモタモタしてると、Dさんがトイレまでやってきてノックする。「急いでください。これに履き替えて」とT字帯を履かせてくれようとする。もう、恥ずかしがってる場合でもないようだ。「部長回診があったから遅れてしまって。あと2分で下に下りないと…」2分〜!?なんじゃそら。着替えるとすぐベッドに横にされ、両側から弾性ストッキングを履かされた。昨日練習したのに…と思いつつ、眺めている私。手術室入りは時間厳守のようだ。遅れると看護師さんたちが叱られるのに違いない。部長の回診のせいにしてもダメなんだろうな、大変だなぁ…。髪の毛をまとめてるゴムも、金属がついてたので取ることに。金属のないゴムがすぐ出せなかったので、髪はそのままキャップの中に突っ込むことになった。
ベッドは敷物も枕もはずされ、高さを上げられ、フラット状態。このベッドのまま、手術室に移動するのだ。歩いて行きたいとこだけど規則らしいから仕方ない。天井を眺めながら廊下を移動し、エレベーターホールで夫に会った。「行ってくるよ」「あ、荷物は?」「ベッドサイドにあるから」「わかった」手術中、貴重品を預かっててもらう約束だったからこういう会話なのだが、もう少し「がんばれ」とかなんとかあっても良さそうな。しかも、エレベーターが閉じる前に手を振ろうと上体を起こしたら、もう去ってしまった模様。せめて最後まで見送らんかい〜!と看護師さんたちと笑う。
中央手術部、と書かれたものものしいドアを通り、例のハッチウェイの前に到着。向こう側には別の患者がハッチウェイに入るのが見える。手術室では4人の看護師さんがにこやかに迎えてくれた。うち1人は昨日説明にみえた方。口頭で氏名確認、ネームプレートとリストバンドでさらに本人確認。手早く頭にキャップをかけられ、ガウンを脱がされた。身体の上には緑色のシートがかけられる。とうとう入室。


〜ハッチウェイでの入室の手順〜
1.自分のベッドの上で手術室に背を向け横向きになる。
2.ういーん、と背中側に板が出てくる
3.出てきた板の上に仰向けになる
4.ういーん、と板ごと入室
5.手術室の中を向いて横向きになる
6.ういーん、と板がひっこむ
7.あら不思議、手術室のベッドの上に


ハッチの向こうでは、病棟看護師Dさんが優しい笑顔で見送ってくれる。心細いが行くしかない。ベッドごとガラガラと奥に移動される。まわりの景色はごく普通の作業室か何かみたい。どこまで行くんだかさっぱり分からない。ふいに、若い男性が寄ってきて「本日担当する麻酔科医の○○です」とおっしゃる。えー、こないだの外来の先生じゃないのか…えらい若いな、大丈夫か?「ここぱんさん、今日はどのような手術をするか教えていただけますか?」なんかの確認のためにそんな事を聞くんだな、と思い、頭の中で考えながら「えと、子宮内膜症のチョコレート嚢腫の…右卵巣の保存手術です」と答える。心なしか「保存」に力が入ったように思う。「はい、ありがとうございます」そんなやりとりをしてるうちに到着したらしい。明るいグリーンの壁の部屋、天井にはあのライト。ああああとうとう来ちゃったぁ。
足元が固定され、ぱぱぱぱっと心電図・血圧計・酸素濃度測定が取り付けられる。頭の下には枕が置かれた。これがなんとなく座りが悪かったので、モゾモゾしていい位置に移動した。ドーナツ型のまくらだったようで、スタッフさんたち「昔はこういう枕がなかったから、ゼッペキの人が多かったねぇ」なんて世間話。これは緊張をほぐしてくれているのだと感じた。のぞきこむ目も、どれも優しく気遣わしそう。
両腕ぐるぐる巻かれて脇に固定される。まあ、それほどきつくはない。案外気分は落ち着いてるなと自分では思う。今のうちにあちこち観察しとこうと思ったが、足元にモニタがあるのと壁に薬品棚があるくらいしか分からなかった。頭のほうに機械がたくさんあったけど、あまり観察して怖くなるといやだったので、天井のライトを観察することにした。テレビで見るやつは、まーるいやつの円周上にでかいライトが5つほどはめこまれていると思ったが、目の前のはタコの足みたいにいくつかのライトが放射状に出ている。なにか、遊園地のぐるぐる回るアトラクションみたいやなーと思う。そういえばBGMは洋楽のようなものが小さく流れていた。
酸素マスクがつけれられた。そして、麻酔科の先生が「はい、では眠くなる薬を点滴から入れますねー」…そのとたん、心拍数UP。ぴっぴっぴっぴっ。看護師さんたちが笑って、「ダメじゃないですか先生〜、そんなこと言うから緊張しちゃった」「あ〜ごめんね〜黙って入れりゃ良かったかー」「すいません緊張しちゃって…」「でもここぱんさん、終わったらちゃんと自分で起きてくださいね!」「そうですよ、ちゃんと目覚ましてね」そんな事言われてるうちに少しぼやんとしてきた。「気分どう?」「少しぼんやりしてきました…」こりゃもうすぐ意識落ちる、と思ったんで、「よろしくお願いします…」とだけ言って、そのあとはもう記憶がない。


***


何かの夢を見ていたと思う。いつもの朝のように目が覚めた、と思ったら例の手術のライトが視界に入った。それで、すぐに「あ、終わったんだ」と気づいた。誰かが名前を呼んで起こしてくれたんだと思うけど記憶にない。看護師さんか麻酔科の先生が何かを聞いて、それに答えようとしたら…声が出ない。喉ガラガラ。かぼそい声でやっと答えた。気分が悪くないか、とか聞かれたんだと思うけど。担当医のC先生が顔を覗き込んでたと思う。そして、お腹がひどく痛く、身体全体が重い。なんだかよくわからないまま、ベッドごとハッチウェイまで戻された。入ってきた時と逆の順番でまた外に出るのだが、腹痛いのに身体横向きにするのは辛かった。移動する板のエッジが微妙に固いし。病棟看護師Dさんが迎えに来てくれていた。麻酔科の先生が「3時まで酸素マスク付けておいてください」と言い、手術室の看護師さんは「皮膚が弱いのねぇ…イソジン焼けを起こしてしまって…」などと言っていた。そうかやっぱり自分は皮膚が弱いのだな、とぼんやり思った。


その頃、夫は手術室横の小部屋に呼ばれ、E先生から説明を受けていた。取り出したばかりの標本も見せられたが、小瓶に入った白い皮状の物体でよく分からなかったそうな。私も見たかった。

PM12:00

ベッドごと自分の病室に戻った。お昼の放送があったので、12時だと分かった。手術時間は予定通りだったらしい。枕元にモニタが置かれ、酸素マスク、腕には血圧計と点滴の管、尿管、お腹にはドレーン、足元にはストッキングはいたまま。苦しい時間の始まりだった。麻酔明けは寒いとよく聞くけど、私は寒くなかった。ただ、手足がものすごく冷えていた。歯が勝手にガチガチ鳴る。「寒い?毛布持ってこようか?」と看護師さんが心配してくれるんだけど、けして寒くはなく身体は熱いのだ。このガチガチは1時間ほどでおさまった。
お腹の痛さは想像以上。ちょっと姿勢を変えようと思っただけで、モロ「生傷」って感じの鋭い痛みが走る。寝返りなんて打てやしない。姿勢が変えられないから腰や背中も痛い、頭も重い。せめて枕があれば少し楽だと思うのに、明日まで枕はダメだって。脚だけは動くけど、尿管が不愉快でこれも動かしにくい。30分おきに看護師さんが来て、体温と血圧を測り傷の様子を見てくれる。痛いというとすぐに点滴から痛み止めを入れてくれ、じきに楽になった。でも、動けなくて辛いのは我慢するしかないらしい。「明日には歩けて楽になるからね。辛いね、ごめんね〜」と何度も謝ってくれた。眠って過ごしてしまいたいと思うのに、苦痛が上回って眠くない。自分の腕を枕代わりにしたり、脚を曲げたり伸ばしたりして時間が過ぎるのを待った。夫と義母がつきそってくれてたけど、見守る以外何もしてもらう事がない。気がまぎれるかと思いiPodの音楽を聴いたりもした。

PM3:00

血圧計と枕元のモニタがはずされる。次に酸素マスクがはずれた。これはうれしかった。マスクがあるとなぜか息苦しくて苦手だった。時々そっとはずして深呼吸してた。
あと、微熱が続いているので、氷枕を出してもらった。これで頭もずいぶん楽になった。
空いたベッドに新しい人が入ったけど、挨拶するどころじゃなかった。辛いとどうしても愛想なくなるね。
部屋に大きな声の見舞い客が来たときも苦痛でたまらんかった。この時だけは1人部屋にすれば良かったと思った。

PM4:00

E先生が様子を見に来てくれた。手術の内容を説明してもらう。
右卵巣は既に一度破裂したあとで、中身が周辺に散らばっていた。散らばったものをきれいに洗い流し、右卵巣の悪いところは取って正常な部分を残して縫合したとのこと。そして卵管は両方通っていたとのこと。良かった〜。破裂してたってのはびっくりだが、きれいにしてもらえて良かった。
明日の歩行に備えて、両足をバタバタ動かす練習を寝る前にしておくように、と言って先生は去っていった。この両足バタバタ、尿管がジャマで少しやりづらいんで、片足だけさかんに練習したりした。

PM6:00

夫が風邪でまだ辛そうなので帰ってもらう。長時間つきそってもらってしんどかったと思う、感謝。
ここからは1人で時間が過ぎるのを待つ。麻酔の影響かウトウトと断続的に眠いけど、完全に眠るほどではない状態がずーっと続いた。少しウトウトして目が覚めると、前よりなんとなく痛みがましになっている気はした。完全に横向きにはなれないけど、斜めくらいなら角度を変えられる。背中が痛くなるとそうやってしのいだ。腰の下に、たたんだタオルケットを入れてもらえたのも良かった。全然楽さが違う。

PM9:00

消灯。これでやっと朝までの折り返し。看護師さんが1時間に1回は様子を見に来て、体温・血圧・傷の様子を見てくれた。お腹のドレーンから体液が出てたようで、ガーゼを何度か交換された。夜中に大量の寝汗をかいた模様。見回りのついでに顔の汗を何度かふいてもらったが、ハンドタオルをどこにしまったかわからず、枕元のでっかいバスタオルで拭いてもらう。手術前にベッドサイドに並べて用意しておけばよかった。
ほかに並べておけばよかったなーと思ったものは、着替え・ペットボトルのお茶・時計くらい。