手足口病と入院生活2

自分が入院するのではなく付き添いで泊まり込むのは初めてで、貴重な体験ではあった。
小児科病棟は、出産した産科のすぐ隣。あの頃ドアや壁にアンパンマンの絵がついた小児科の病室を横目で見て、大変だなぁと人ごとのように見てたっけなぁ。


夜。ベッドによじのぼって子どもに添い寝してみたが、眠れん。とにかく眠れん。
1〜2時間おきに看護師さんが見回りに来るので起きて会話したり、子どもがぐずったら抱っこしたり授乳したり。あとは子どもが寝返りするたびに、点滴の管をつぶしてないか確認してまっすぐに直す。輸液が止まるとでっかい音のアラームが鳴って子どもが起き看護師さんが飛んでくるから、けっこう気が抜けない。もう一つ、ホルター心電図をつけていたのでテープをかゆがって掻き、はがれること数回。そのたびにナースコール。
うとっ…とする時もあったが、「はっ!!いかん!」って感じで目が覚めた。くたびれて眠りたいのに何かが拒否している。神経が高ぶってるっていうのか、結局一睡もできず。
お産で入院して出産直後もこんなんだった。あの時は産後ハイで疲れも感じなかったが。


朝、熱も下がり食欲も出てきてよく食べていたし、昨日より表情も出てきた。食事はきざみ食にしてもらえた。
が、点滴と心電図はついたままで、ベッドの上でしか遊べない。家からおもちゃを持ってきたけど、持とうとすると右手が使えないのに気づいてかんしゃくを起こして泣いた。なるべく手を使わなくて済むように絵本を読んだり子供番組を見せたりした。


今日の予定は脳波測定。これが寝ている間しかできないというので、昼間寝てもらうために「なるべく夜眠らせないでください」と無茶なお願いをされたんだった。せっかく落ち着いて眠ったのを邪魔したくないし、一晩中起こしておく自信も体力もないから早々に諦めたけれど。

朝食を食べてしばらく遊ぶとスーッと寝てしまったのでただちにナースコールで知らせたが、午前中は検査室が予約いっぱいで無理とのこと。そしたら今あまり寝かせておくわけにいかず、看護師さんと相談して小一時間でたたき起こした。呼びかけても揺すっても起きてくれず途方にくれたが、空き缶のやかましいおもちゃを耳元でガシャガシャやるとパチッと目を開けて遊びだした。よかった。

午後。昼食を食べるとまたすぐ眠そうな様子。看護師さんを呼び、今度はOKが出たので抱っこしてすぐ検査室に下りた。
廊下の奥にある鉄の扉の奥が検査室。あちこち糊を塗られ、頭やら耳やらにたくさんの電極がつけられた。寝てるからいいものの、起きてたら大暴れだろうなぁ。
全部ついたらそーっとベッドに下ろす…が、子どもというのは下ろすと起きると相場が決まっていて、案の定泣き出した。「あー下ろさなくていい起きる起きる」と技師さんに止められ、抱っこのまま検査することに。でも「15分ほどかかるよ」と言われるとちょっと腕で支えきる自信がなく、もう1度挑戦させてもらった。息を殺してそーっと下ろし、ちょっと泣きそうだったのをトントンしてどうにか成功。ここで失敗して起こしたら技師さんに何を言われるか分からない緊迫感でありました。
鉄の扉が閉められ、真っ暗な中で検査開始。小窓があるから平気だったけど闇の密室だったら閉塞感でつらいかも。椅子に座って見守ること10分ほど、子どもが急にごろんと寝返り。うわー起きるな起きるな…とトントンしてたら、部屋の明かりがついて技師さんが入ってきた。どうやら寝返りした時に電極が取れたらしい。苦労したのに失敗か〜〜とがっくりしかけたけど、それまでにデータは一応とれたとのこと。
子どもは目を覚まし、糊でべとべとの頭で不思議そうに見ていた。

「眠ってから連れてくるんじゃなくて、眠りそうなときに連れてきてここで寝かせてくれって何度も言ってるんだけどねぇー寝てから来るとこうなるんだよ、今日はまだ起きないだけ良かったけど」と技師さんにぶちぶち言われ、なんかすいませんと謝りそうになった。迎えに来た看護師さんが苦情言われてたけど、眠たそうなときにナースコールしたって移動するまでに寝てしまうよねぇ。

無事検査も済み、活発に遊ぶようになったので心電図もはずしてもらえた。一度でも床で遊ばせるともうベッドでおとなしくしてくれなくなるからと、狭いベッドで我慢してもらったが、あまり気にしてないようで楽しそうに遊んでいる。
じじばばも孫の一大事というので大挙してやってきた。食料もたっぷり差し入れてくれたので、私はそれを食べて過ごした。夫も仕事を切り上げて赴任先から来てくれた。一度付き添いを替わってもらって家にシャワーしに帰り、ついでに少し仮眠をとろうとしたが、やっぱりいくら横になっても眠れないので諦めて病院に戻った。

早々に脳波の結果が出て、主治医の先生が知らせにきた。たまたま小児神経科の先生が診療に来る日で、診てもらえたそうだ。ありがたい。結果、疑わしい脳波はなし。血液も心電図もCTも脳波も異常なし。熱も下がったので明日には退院できる見込みになった。
よかった、ホッとした。

ただ、呼吸がぜいぜいしているからと粉薬が出された。ドライシロップだから溶かすと甘いんだけど、嫌がるので飲ませるのが一苦労だった。スポイトをもらって半ば強引に口に入れた。

2日めの夜はどろんと眠ることができた。点滴の管も意外につぶれないのが分かってきたのでたまに直す程度。看護師さんが来ててもすぐには目覚めず、「管が首に巻き付いてたから直しましたよ」と言われてしまった。