破水〜陣痛室へ

朝。カーテン開けたら窓からの景色に癒された。目の前に川が流れ、川もやの向こうには自分が産まれ育った町が朝日に照らされている。死ぬときゃこの病院にするべぇと思った。
で、痛みは消えることなく繰り返し継続中。痛みの合間はなんともないとはいえ、食欲なく朝食もあまり食べられず、喉が乾くので家から持ってきた果物なんかを食べていた。胸がつかえる感じでげっぷがしきりに出る。これがひどくなると吐くらしいけど私はそこまでならなかった。
朝8時すぎだったか、トイレから戻る最中に痛んでしゃがみこんでると、「じゃばっ」と温かいものが流れ出す感覚が。尿漏れじゃないし、止まらないし、さては破水!?とナースコール。助産師さんが検査キットを持ってやってきた。羊水かどうか調べると分かるのだそうだ。結果、破水してますねーということで「お産パッド」を使うことに。これ、生理用ナプキンのお化けみたいなやつなんだけど、入院中は本当にお世話になった。持参したのとお産セットの中のじゃ足りず、何度も自販機まで買いに行ったなぁ。お肌にやさしい感じです。
破水したら陣痛が加速する人多いですよ、と言われてドキドキしながら過ごす。そして、確実に痛みは強く耐え難くなっていった。

その耐え難い痛みに耐えてると、ナースコールで呼ばれた。診察があるので、休み休みでいいから来てくださいと。こんな痛いのに歩かせるかいっと思いつつ、ヨロヨロと診察室まで歩く。他の妊婦さんが「この人大丈夫なの?」って顔してる。でもスタッフには慣れた光景なわけで、誰も助けてくれない。椅子に座って背中まるめてふーっ、ふーって呼吸しながら自分の番を待った。診察の結果、子宮口3cm。半日経ったのにまだ3cmか…。がっかりしつつ、よろよろと部屋に戻る。

夫が来たので、痛むたびに腰をさすってもらい、ベッドの柵を握りしめて耐えた。毎回、マメに時間を記録してたんだけど、途中で助産師さんに「分かるからつけなくていいですよ」と言われてつけるのやめた。家出る時点で痛みは100回を越えてたから、最終的に何回になったかわからない。
お昼。運んできたごはんを食べようとするんだけど、もう2〜3分おきの痛みになってたので、口に入れてもごもごしてるとぐぶっ!とむせて咳き込むはめに。それが怖くてほとんど食べられなかった。トイレも痛みの合間に行くんだけど、毎回トイレで冷えて痛みだし、慌ててベッドまで戻るかしゃがみこんでやりすごした。数時間おきに胎児監視装置をつけるときには、もう横になってると耐えられないので座ったままさせてもらった。

夕方になり夜になり、ふたたび内診をされた。子宮口、3cmのまま。がっくりきてしまった。こんなに痛いのになんで開かないの?夕食も食べられなかったし、横になることもできないし、相当参っていた。腰をさすりつづける夫も疲れはてていた。母が来ていたので、夫と交替でさすってもらうことに。個室だから夜中でもさすってもらえたわけで、良かったなぁと思う。うめいてもわめいても気を遣うことないし。でも、隣の部屋の赤ちゃんの泣き声はよく聞こえたから、こっちのうめき声も隣に聞こえてたかも。不気味だったろうなぁ…。

深夜になると間隔は1〜2分おき、痛みの長さは3分間。痛い時間のほうが長く、痛みの合間も余韻が残ってる。握り続けてるベッドの柵が折れるんじゃないかと本気で思った。あまりに苦しそうな私をみて夫がナースコールしてくれた。助産師さんが来てまた内診してくれたが、結果4cm…。子宮の収縮ぐあいは装置の針が振りきれるほどで、「張りが強いですね、いい陣痛来てますね」ということなのだけど、子宮口が開かないうちはひたすら耐えてもらうしかないとのこと。陣痛室に移動しても良かったらしいけど、個室にいたほうが気が楽だから移動するのはやめた。

ここから数時間は、もうろうとして過ごした。経験したことのない痛みが押し寄せ、睡眠も長いこととれず、食事もままならず。心身ともに限界に近かった。陣痛を今さらリセットもできず、産むしかないのだけどそんな体力が残っていると思えない。私が唸り出すたびに夫と母が腰や背中をさすりつつ呼吸をリードしてくれるんだけど、この2人は一体なにをしているのだろう。私達はここでなにをしてるんだろう。なんでこんなに苦しいのだろう。もしかして私のためにさすってくれてるのか…て感じで、現状もよく認識できていない感じだった。たまに我にかえるんだけど、もうもう、1億円積まれたって二度と子供は産むものか!なんて考えていた。夫と母も疲れて半分眠りながらで、様子を見に来た助産師さんは後日「誰か倒れるんじゃないかと思った」と言ってました…。

明け方4時くらい、また内診。期待しないでおこうと思ったら助産師さんはにっこりして「よくがんばりましたね。7cmですよ」と。このときの嬉しさといったらなかった。必要な荷物を持って陣痛室へ移動。幸いほかに陣痛中の人はおらず、のびのびと部屋を使うことができた。