シルヴィ・ギエム 最後の「ボレロ」 感想3

ボレロ

2回目のボレロです。前回は3階席から見ても衝撃を受けた。ラストならしっかり目に焼きつけておかないと。
始まる前はそこらじゅうで咳払い。客席も緊張してるみたい。私もつられて咳払い。真っ暗なステージに前奏が響き、スポットが点って左手が動き始めた瞬間から食い付くように見ました。顔を上手に避けて手と灯りが身体の上を移動する。(思ったけど照明係さんもすごい。照らす位置とタイミング、どやって合わせてるのかね。)

少しづつステージが明るくなり、赤いテーブルの上でリズムを刻むギエムの全身が見え、椅子に座る男性リズム隊が見えてきた。リズム隊はだらりんと座り、時折かったるそうに首筋をぬぐう仕種。この動作が好き。ギエムのうねるような動きはどんどん強さを増して、足を振り上げる6時のポーズや、片足で跳ねながら滑らかに回転したり、遠くから手招きするような仕種、だらんとうつむいた姿勢からばっ、と髪を振り上げてライトの方を仰ぎ見る瞬間や…好きなとこがいっぱいありすぎて覚えてない。上げた足はほんとに鼻先に届いてるし。手も足も髪の毛すらも自在にあやつって、どういう肉体なんだろう。毛先まで生き物のようにまとまって動いてる。


2人、4人、とソロにつられて動き出すリズム隊。立ち上がった時からかすかに腰でリズムを刻んでて、そのうち我慢しきれなくなったように踊りはじめる。そして男達が踊り出しても、それには何ら応じることなく毅然と舞うギエム。まだ椅子から動かない男達を挑発するように、テーブルの上から眺めまわす。その目線が、すごかったです。群舞の一人ひとりを熱のこもった目で「舐める」ような…睨んでるんじゃなく、ほんとに目で撫でてるような。今日一番圧倒されたのがその目でした。


やがて群舞の全員が憑かれたようにテーブルを囲んで踊りはじめ、ボルテージは最高潮に達する。前回は「女神」のように見えたのですが、今回は女性に見えなかった。筋肉質の身体のせいもあるけど、表情から性別を超えたオーラが出てて「神のようなものがそこにいる〜」と感じた。
終盤は「もっと、もっと、まだ足りない!私を満たしなさい!まだまだ!私とともに踊りなさい!」…っていう風にも見えたんです。神様じゃなくて女王様みたいだな。もう数分続いたら客席もつられて踊り出したかもしれない。


終わったあとは嵐のような拍手とスタンディングオベーション。団員に支えられてテーブルからふわりと下りるギエムはもう柔らかい笑顔で、女性に戻ってました。カーテンコールではいつものように花束軍団が押し寄せるかと思ったら1人2人しかいなかった。でも手ぶらで握手を求めに行く人は数えきれないほど!!あれって良いのかな。ギエムも一瞬困惑顔でした。子供達ならしょうがないか、と思うけど大人が混じってると何だか興醒めしてしまいました。それでも全部笑顔で応じてくれるんだからギエムさん好き。また地元に来てほしい。花束持って行ってやる!


関係ないけど、休憩中にホール入口で長髪長身の外国人カメラマンを見たけど、噂のギエム彼氏さんだったのかな。